大森望編「ヴィジョンズ」講談社, 2016
概要
ヴィジョンをキーワードに、宮部みゆき、飛浩隆、木城ゆきと、宮内悠介、円城塔、神林長平、長谷敏司の7名による小説6編と漫画1話のSFアンソロジー。
感想
最後に読んだ編集後記によると、全く別々に執筆された小説のようだが、前の作品を連想することが時々あって、ある種のリレー小説なのかと思った。同じ時代の作家が同時期に同じテーマで執筆した作品がなんとなく関連性を感じさせたと思うと面白かった。印象に残ったのは、飛浩隆「海の指」、木城ゆきと「霧界」、円城塔「リアルタイムラジオ」、神林長平「あなたがわからない」、長谷敏司「震える犬」。他の著書も読みたくなった。
サイエンス・フィクションは、人によって思い描くものがかなり違うと思う。私は、小説の場合は特に、近現代の延長の社会と科学風の説明ができる架空の法則や技術を前提にしたものがSFだと思う。
海の指:独特な世界を視覚・聴覚で描き出した正統派ヴィジョン。単語の使い方も独特で、文字の当て方が良かった。
霧界:海の指を原作とした漫画作品。当初の企画が完遂されてほしかったとしみじみ思った。
リアルタイムラジオ:ブロックチェーン技術の擬人化かなと思ったら、ないはずの幻肢が登場し、最後はフラクタルな話になる。ないはずの幻肢がとにかくおもしろかった。無意識に存在し失われうるヴィジョン。
あなたがわからない:ヴィジョンというテーマで、空気が読めないというユーモアに笑ってしまった。見えないヴィジョン。
震える犬:近未来SF、もしや現代SF、ノンフィクションかもしれないと考えてしまうストーリー。見えるもの、見せられているもの、見えないもの。