PoolWoolTool’s blog

ジャンルフリー生活ログ

咀嚼不要食

  • 野菜ジュース
    • 材料
      • 小松菜:1株
      • りんご小:1個
      • 生姜:薄切り1枚~お好み
      • 酢:小匙1~お好み
      • オリーブオイル:お好み
      • スパイス・ハーブ:お好み
    • 作り方
      • 野菜を適当な大きさに切る。
      • 材料すべてをジューサーやミキサーなどで液体状にする。
    • 備考 
      • りんごをおろすと見る見るうちに色が悪くなるが、小松菜を入れると緑色になるのでその辺が気にならない。
  • ガスパチョ風スープ
    • 材料
      • トマト:1個
      • きゅうり:半分
      • パプリカ:半分
      • 玉ねぎ:ほんのひとかけ~辛みを見てお好みで
      • ニンニク:ほんのひとかけ~辛み・香りを見てお好みで
      • パン:3cm四方くらい~お好みで
      • 酢:小匙1~お好み
      • オリーブオイル:小匙2~お好み
      • 塩:ひとつまみ~お好み
      • 胡椒:少々
    • 作り方
      • 野菜ジュースと同じ。胡椒は最後に振る。
    • 備考
      • パンを多めに入れるともったりした食感になり、食べ応えが出る。さらっと食べたいときはパンを抜く。
  • ヴィシソワーズ風スープ
    • 材料
      • じゃがいも:2個くらい
      • 玉ねぎ:1/4
      • バター:5g~お好みで
      • 牛乳:200ml
      • 塩:お好み
      • 胡椒:お好み
    • 作り方
      • 野菜を一口大に切ったら電子レンジ等で火を通す。
      • 後は野菜ジュースと同じ。野菜の余熱でバターを溶かしつつ混ぜる。胡椒は最後に振る。
      • お好みで冷やす。
    • 備考
      • パンを追加しても良い。
      • 野菜をコンソメスープで煮て牛乳を加えるのもおいしい。その場合、バターは抜いた方が調和する。
  • シェントウジャン風スープ
    • 材料
      • 豆乳200ml
      • 酢:小匙1~2
      • ごま油:小匙1~お好みで
      • 醤油:小匙1~お好みで
      • 豆板醤かラー油:お好みで
      • 具:お好みで
    • 作り方 
      • 器に豆乳以外の材料を全て入れる。
      • 豆乳を沸騰しない程度に温める。
      • 器に豆乳を音を立てないくらい静かに注ぐ。
    • 備考
      • ごま油で具を炒めておいても良い。特に豆板醤等を入れる場合は炒めたほうがいい。
      • 豆乳の温度が低いと茶碗蒸しのようなとろっとした豆腐風のものが、温度が高いと朧豆腐状のものが豆乳スープに浮く感じになる。
      • 酢の量が多いとかき玉汁のように透明な液体と豆腐状固体に分かれる。
      • 豆乳を注ぐときに勢いをつけると一部だけごろっと固まりやすい。
  • パンのお粥
    • 材料
      • 好きなインスタントスープ:1人前
      • パン:適量
      • 塩・胡椒:お好みで
      • スパイス:お好みで
    • 作り方
      • インスタントスープを指定量あるいはやや少なめの水で作る。
      • パンを適当にちぎって浸し、ふやかす。
      • お好みで塩胡椒で味を調える。
    • 備考
      • スープはコンソメなどのパンが吸いやすいものがよい。ポタージュ等は向かない。
      • パンは甘みのないフランスパン等が合う。

ダロワイヨのペペロンチーノ風マカロン

ペペロンチーノ風マカロン。マカロンというからには甘いだろうが、甘いペペロンチーノとは?味が想像できないので、食べてみた。

一口かじると、マカロンとしてはもちろん食べたことない味だが、何かに似ている。しかしこれはペペロンチーノではない。これは何だろう。

親しんだ甘いマカロンの皮の味わいと同時に、案外ちゃんと塩気がするガーリックバターとバジルの香りが広がり、後味は少しピリッとする。これはしょっぱい系のクッキーに通じるものがある。強く感じるバジルの香りがトマトバジル風味、ピリッとした後味は黒胡椒風味のクッキーを彷彿とさせる。

クリームの風味はこれはこれで悪くないが、マカロンなので皮が甘い。ユニークとではあるが、クリームと皮があまり調和していないと感じた。クリームだけで言えばお酒が合うかもしれないが、皮はそうでもなさそうで、合わせる飲み物が悩ましい。

何より、ペペロンチーノといえばオリーブオイルとにんにくと唐辛子だが、ペペロンチーノ風マカロンはガーリックバターとバジルと胡椒感。バターの風味がしっかりしているのはバタークリームとしては良いが、ペペロンチーノを期待していると違和感が大きい。ジェノベーゼ風だったらもう少し馴染んだかもしれない。

もう一度食べたいとは思わないが、変わり種マカロンとしておもしろかった。

上野千鶴子、田房永子「上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください」大和書房, 2020

 社会学者で東大名誉教授の上野千鶴子さんと、漫画家・ライターの田房永子さんの対談本。テーマは書名の通り、田房さんが上野さんにフェミニズムについて教わるというもの。ただし、教える側の上野さんはジェンダー論の研究者・教育者だが、教わる側の田房さんもフェミニズムに関する著作がありフェミニズムに疎いというわけではまったくない。ではどういうことかというと、上野さんと田房さんは30歳差で、経験してきたものが大きく異なるのである。この本では、フェミニズムの世代間交流を通して、まずこれまでのフェミニズム運動をおさらいし、次に現在の課題や活動について語り合った後、最後に、これまでの議論を踏まえて、フェミニズムとはこういうものであるとまとめている。

 本書を手にしたきっかけは2つある。1つ目は、少し前にNHKR1「高橋源一郎飛ぶ教室」で、どういう文脈だったか忘れたが「フェミニズムは一度触れてみたほうがいい」という話があって、フェミニズムという言葉は聞きなれたものだが中身を知らないなと思って引っ掛かっていたこと。2つ目は、差別に関する本を読んでいるときに、中立の立場から説かれる一般化された差別が味気なくて実感がわかなかったこと。そこで、それなら女性差別との戦う(という理解だった)フェミニズムについて知る良い機会かもしれないと考え、本書を読むに至った。これは正解だった。

 先に、本書で語られるフェミニズムを説明すると、男女不平等で女性差別的な環境で育ったことで自身に根付く女性蔑視と戦うことである。これが、女性の場合、女性蔑視が自分自身にも向かうため、自分の自身に対する蔑視との闘いであり、自身と和解し尊重することを目指すことになる。ここからは主に女性にとってのフェミニズムの話だが、背景に社会や歴史があるとはいえ、起点はあくまで自分の自身に向かう女性蔑視という極めて個人的なものであるため、フェミニストは自らそう名乗ればフェミニストであり、その在り方は多様で、フェミニズムには正解はない。そのため、フェミニスト同士でも論争を重ねることになり、それによってフェミニズム議論は深まってきた。これが最後の20%で語られる。

  では最初から80%を振り返ると、まず、上野さんがフェミニズムに関わるきっかけになった学生運動や、田房さんのテーマである母との関係といった経験にまつわる話題が多種多様に取り上げられ、世代による捉え方の違いなどが議論される。上野さんから、これらの経験の中で感じた違和感や不快さの原因が、社会・慣習にあることが解説される。歴史を振り返ると、現在は、女性に人権がなかった頃に比べれば確かに改善されてたとはいえ、これは女性を尊重しているわけではなく、弱者である女性を強者であり既得権益者である男性と同じように扱っているに過ぎない。つまり、伝統的な男性優位の社会があり、女性は、その男性優位社会において男性と同じように振る舞うことを男性に許されている。ここで、男性は女性を男性と同じように扱うことで尊重したと考えるが、女性が求める尊重は女を捨てて男性として扱われることではないため、すれ違っている。結果、女性は社会に進出したものの、その男性目線の平等社会に違和感や不快さを感じることになっている。という流れで、色々な経験の中で感じる女性差別の起源が理解できる。

 前半の話は、読者が共感できるものもそうでないものもあると思う。だからこそ、最  後のフェミニズムは個人的な体験が出発点になる多様な考え方というのが腑に落ちて面白かった。

 日本は今も男性優位社会で、女性は男性に許されて初めて行動できるという構造は本質的には変わっていない。ホモソーシャルな社会における女性による自身に向かう女性蔑視は、マイノリティに多い詐欺師症候群と関係がある気がする。

 この構造を理解しているフェミニストは、この状況を変えるためには既得権益者=ホモソにこの問題を理解させるには気の遠くなるほど多大な労力を要することが分かっているし、手間暇かけるほど社会全体には思い入れがない。結果、フェミニストの闘いは特定の大切な相手と男女が互いを尊重する人間関係を築くための個人的なものになる。私の周囲には、そんな女性たちがいる。実は、彼女達がパートナーと多かれ少なかれ険悪になるのを意に介さず断固として闘うことについて、能天気にも家族を持つのは大変だなと思っていた。実際は、家族だからこそ闘うのであり、家族ですら闘わないと対等な家庭を築けないことが本書を読んでわかった。

 今後の男女平等な社会については、まだ考えがまとまらない。楽観的な見方をするなら、そんな闘いによって社会の最小単位である家庭にフェミニズムが浸透することで、社会全体が次第に変化するだろう。一方で、独身世帯が増えることで、身近な闘う相手がいない女性も多いと考えられる。一対一の闘いの他に、多対多の環境が発達してほしい。MeToo運動がそれだったが、日本では男性は距離を置いていたと感じる。長年の刷り込みを一撃で吹き飛ばすことはできないからこそ、多対多でも継続的に議論が続くことで、家庭とは別の面からも変化を促すことができるかもしれないと考えている。

Voice of Cards ドラゴンの島 (2021)

こんな人におすすめ

概要

 安元洋貴GMを務めるTRPG風ゲームと紹介され、GMがいるテレビゲームとは?と興味を持ってSteamで購入。のんびりプレイして1周目は12時間くらい(うろおぼえ)、全実績解除時点のSteamプレイ時間29.6時間。丁寧にプレイして運がよければ1周でほぼ全実績解除できる。シナリオとキャラクターは趣味に合わなかったが、探索や戦闘等のシステムは面白かったし、ゲームの定石を知っていれば楽しくさくさく進められる難易度なのも良かった。

趣味に合わなかったところ:シナリオ

 TRPG風と聞いて、ゲームブック風を期待したが、実際はTRPGリプレイをモチーフにしたボードゲーム風だったと思う。最初にプレイしたときは、キャラクターの性格や背景の解像度がまちまちで、困惑した。レトロなゲームっぽいかもしれない。特に、終盤の展開は唐突で、あっけにとられた。

 わけのわからないシナリオについて考えて行き着いたのが、リプレイ風という解釈だった。複数のTRPGプレイヤーが、各自自由に作成したキャラクター(あるいはGMが用意したお助けNPC)を持ち寄って、ドラゴンの島というシナリオをプレイしたリプレイに基づいて、肉付けしたとすると、まちまちな設定の深さも唐突な展開も納得できた。

 シナリオとは別によくわからなかったのは、頻繁に主人公の行動を選ばせること。好感度はないので、影響は次のセリフが変わる程度で、そもそも大差ない選択肢も多く、ゲーム性がなかった。GMの語りだけで飽きないようにという配慮だろうか。

 なお、安元洋貴演じるGMは、プレイヤーをゲームに導き、茶々を入れたりヒントを出したりするマスコットみたいだった。

面白かったところ:フィールド探索と戦闘

 フィールドやダンジョンは、机の上に伏せて並べられたカードで表現されていて、プレイヤーがコマを進めるとカードが表に返されて地形やイベントが明らかになる演出。踏破したところが視覚的にわかるのが単純に楽しい。ただし、フィールドの横移動が特殊で、移動しにくい箇所が多かったのが残念。

 戦闘は、全体的にシンプルで楽しかった。ターン制。スキル発動リソースのジェムが陣営共通なのでジェム補給、スキル発動、ジェム不要行動特化など、スキル構成・メンバー構成で工夫できて面白かった。普通に遊べば、金稼ぎやレベル上げといった作業が不要な調整になっている思われ、戦闘にうんざりすることがなかったのも大きい。

その他(主に実績関係):

  • 収集要素について、項目を1つずつ開いて確認しないと取得状況がわからなかったり、購入画面で所持状況を確認できなかったりというのは手間だった。
  • フィールドに色々仕込まれているのが面白いところだが、狭いところの横移動がとてもしにくかった。WASDだったが、ジョイスティックだと斜め移動ができるのだろうか。
  • とある実績が全くわからず、お手上げになって調べたところ、フィールドでランダムに発生する、結果もランダムなイベントにおいて、ある展開を見ると、解除できるというものだった。序盤から発生するイベントらしいので、運だと思うが、他の実績を全て解除した後に、ひたすら歩き回ってイベントを起こしてハズレを引くというのを繰り返すのは苦痛だった。フィールドに色々仕込まれているのはこのゲームの面白いところで、イベントの種類も多く、全実績解除間際でも初めて見るイベントがあったのは驚いたが。
  • オート機能が欲しかった。
  • ゲームの終了方法がわからなかった。メニュー>オプション>その他の中にあるとは思わなかった。

バランス栄養食COMPの効能

 「バランス栄養食COMP」とは、1日分のカロリーをCOMPで摂取すれば、必須栄養素を満点摂取できる食品のシリーズである。粉末、グミ、アイスなど、種類が色々ある。これが意外にもQOLを手軽に上げたので、私はCOMPの粉末タイプTBを愛飲している。粉末タイプは、水を加えてよく撹拌した後に飲むだけという本当にシンプルなもの。調理がシェイカー1つで済むので、片付けも簡単。販売サイズがkcal表示なところに、大真面目にもドライにも思えるユーモアを感じて気に入っている。

 合理的な栄養摂取をコンセプトにした食品は色々あるが、合理性の意味合いだったり、重視する栄養素だったり、意外と多様でおもしろい。COMPの場合は、趣味に没頭しつつバランスの良い食生活を送りたい開発者の個人的の需要に端を発して設計されたとのこと。kcal表示はコンセプトの端的な表現として合点した。

 余談だが、開発者の趣味はプログラミングだそうで、COMPの各製品にもバージョンがあり、バージョンアップがある。2022/1/3現在、TBはv5.1.である。

www.comp.jp

私が感じたCOMPの効能

  1. 必要なものを摂った満足感
     食事を抜いたり、バランスの悪い食事を摂ることにより、自らの健康をないがしろにしたことによる一種のうしろめたさから解放される。ジャンクなものが食べたいとか、食事に手間ひまかけたい気分の真逆の気分の時に好適。
  2. 食事へのリソース割り当てが楽しい
     調理時間が短く、後始末もシェイカー1つで簡単。それで十分な栄養とカロリーが摂れる。よって、やりたいことに時間を割きたいので食事はCOMPで済ますと決めれば、やりたいことを時間いっぱいできる上に、自分の英断に気分がよくなる。
  3. 非常食
     賞味期限は未開封で製造日から6ヶ月、常温保存。バッグは950g/4000kcalなので、2~3日程度の基礎代謝を賄える。水はもともと必須として、COMPを備えておけば万が一にもCOMPでどうにかなるという安心感がある。

実は、健康面での効能は、もともと著しい問題のある食生活でもなかったこともあってか、特に感じていない。むしろ、COMP導入前は食物繊維を多めに摂る食生活だったためか、COMP導入後は相対的には便秘気味になったと感じているものの、特に対処が必要なことにはなっていない。

私の飲み方

標準的な方法で、特に変わったことはしていない。

  1. 400kcal相当のTBを公式シェイカーに注ぐ。公式スコップだとすりきり2杯 or 1 PACK。気分で量を変える。
  2. シェイカー8分目くらいにまで水を加える。振る前の時点で、全体で450~500mlにする。
  3. 5秒ほどよく振る。ダマになりやすいのでコツがいる(参考情報参照)。振った直後は、全体で400~450mlくらいになっている。
  4. 一気に飲む。
  5. シェイカーを洗う。

味の感想

 すごくおいしいとは言わないが、工夫しないと飲めないというほどまずくはない。割り切った食事としてはありな味だと思う。

 標準タイプTBは、調整豆乳に似た風味と甘みを感じる。豆乳に比べると、少々粉っぽいのと、攪拌によって空気を含むためか、もったりしている。豆乳似てはいるが、コクがないので、豆乳代わりにコーヒーに入れると、薄まったコーヒーという感じになって、合わない。粉そのものに飲み物を加えて混ぜるというのはやったことがない。
 糖質調整タイプLCは、ミルキーな風味で、しっかり甘い味がする。LC用にフレーバーパウダーがあるが、LC単体でも私には甘く、食事としては飲みにくかったので、試していない。

参考情報

  •  ダマにしないコツ: 私は主に2を採用。
    1. まずシェイカーに水を100ml程度入れた後にCOMPを注ぎ、改めて水を適量加えてから振る。
    2. まずCOMPを容器に注ぐ。水を加えてから振るところまでをできるだけ短時間で済ます。つまり一気に水を注いでなるべく早く蓋をしてすぐに逆さに構えて向きを変えつつ5秒ほどよく振る。
  • 腹持ち:飲んでしばらくすると空腹感はなくなるが、満腹感はない。牛乳や豆乳と同じ程度で。見た目通りの腹持ち。私は腹持ちは重点を置いていないので、気にしていない。
  • 粉末タイプの販売サイズは400kcalのPACKSと4000kcalのBAGSの2種類。BAGSはTBのみ。TBは主に味で選んだが、BAGSという選択肢があり、気分で量を選べるのも良かった。BAGSは、TB v5.1.公式のスコップを使うと、2杯すり切りで400kcal = 95g程度となっている。ちなみに、公式スコップは幅約6cmと大きいので、このスコップでそのまま注げる容器があると便利。公式シェイカーはもちろんぴったり入る。

www.comp.jp

ブレイディみかこ「ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート(第2版)」岩波書店, 2016

感想

 政治というものが、伝統ある席取りゲーム以上に見えなくて、我が事としての関心が持てない私が、政治について何か考えてみたくなる気持ちになった。読むきっかけは全くそんなものではなく、ただ「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」が面白かったから、著者の他の本も読みたくなって適当に手に取ったのがこれだった。あちらは随筆でこちらは政治時評なので、調子は異なるが、期待通り、ユーモアが効いていて面白かった。読んでから知ったが、2021年11月に最新時評を加えた改訂版ヨーロッパ・コーリング・リターンズが出ていたので、そちらも読みたい。

 著者は「地べた」を自称する通り、労働者階級で左側よりの視点の批評である。私は自分がどちらよりの考えの持ち主かわからないレベルの無関心だったが、読み進めるうちに左側の視点がなんとなくつかめてくる。また、外国を舞台にした労働者階級の当事者目線で語られるからか、実感がわかない事情も素直に読めた。この辺は、「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」を読んでいたことも影響したと思う。

 この「素直に読めた」ところが、冒頭の「政治について何か考えてみたくなる気持ち」につながったと思う。本書は読者に英国政治の前提知識をほとんどを求めていない。よって、知らないことを恥じたり悲しんだり罪悪感を覚えることもなく、現実社会の問題をある面から解読することができる。本を読む間、私はこんなことも知らなかったのかと思う気持ちが続くのは、疲れるし気分が下向きになるが、本書はそういうことがなかったので、読み終えてそのままの考えを巡らせることができたのが良かった。

 与党は既得権益と国際経済に基づく利益を重んじ、野党は与党でない政党でしかない状況に対して、投票する先がないと嘆くミドルクラス。彼らの前に現れたのは、従来の経済中心の政策を否定し、暮らしを中心に据えた方針で国を運営するという強い信念を持った政治家だった。スコットランド、英国、スペインで起こったことは、簡単に言えばこういうことだと思う。人々が熱狂的に彼らを迎えたことは理解できる。一方で、退屈な閉塞感に覆われているとき、これまで目の前にあったものと全く異なる力強い何かが現れたら、それがよかれ悪しかれ吟味抜きで熱狂する気持ちもわかる気がした。何か新しいことが起こりそうという予感は気分が良いし、今より悪くなることはないと思えば大胆な賭けのリターンは青天井になる。2016年から2020年にかけてのアメリカは、遠目には何がなんだかわからないお祭り騒ぎに見えていたが、文字通りお祭り騒ぎだったんだと、今更ながら納得し、同情し、その熱狂には一抹の羨ましさを感じた。

読んだ本の概要

 英国で労働者階級として暮らす日本人の著者による英国政治時評。ミドルクラスを振り回してきた政治と経済、英国政界に地殻変動を引き起こす国内・EU内の新興勢力の動き、それに対する様々な階層のリアクションへの論評が中心。ちなみに本書はBrexit決定前まで。3つの章に分かれていて、章には題名がないが、こんな感じの章立て。

  1. 2014~2015の英国の「地べた(労働者階級)」の現実
  2. 地べたの人々を惹き付ける新たな政治勢力の台頭
  3. 人々が色々なスケールで階層化され分断されたことによる複雑な混乱

大森望編「ヴィジョンズ」講談社, 2016

概要

ヴィジョンをキーワードに、宮部みゆき飛浩隆木城ゆきと、宮内悠介、円城塔神林長平長谷敏司の7名による小説6編と漫画1話のSFアンソロジー

感想

 最後に読んだ編集後記によると、全く別々に執筆された小説のようだが、前の作品を連想することが時々あって、ある種のリレー小説なのかと思った。同じ時代の作家が同時期に同じテーマで執筆した作品がなんとなく関連性を感じさせたと思うと面白かった。印象に残ったのは、飛浩隆「海の指」、木城ゆきと「霧界」、円城塔「リアルタイムラジオ」、神林長平「あなたがわからない」、長谷敏司「震える犬」。他の著書も読みたくなった。

 サイエンス・フィクションは、人によって思い描くものがかなり違うと思う。私は、小説の場合は特に、近現代の延長の社会と科学風の説明ができる架空の法則や技術を前提にしたものがSFだと思う。

 海の指:独特な世界を視覚・聴覚で描き出した正統派ヴィジョン。単語の使い方も独特で、文字の当て方が良かった。

 霧界:海の指を原作とした漫画作品。当初の企画が完遂されてほしかったとしみじみ思った。

 リアルタイムラジオ:ブロックチェーン技術の擬人化かなと思ったら、ないはずの幻肢が登場し、最後はフラクタルな話になる。ないはずの幻肢がとにかくおもしろかった。無意識に存在し失われうるヴィジョン。

 あなたがわからない:ヴィジョンというテーマで、空気が読めないというユーモアに笑ってしまった。見えないヴィジョン。

 震える犬:近未来SF、もしや現代SF、ノンフィクションかもしれないと考えてしまうストーリー。見えるもの、見せられているもの、見えないもの。